速さを知る

世界一速いタイピストはどれくらい速い? 記録と、その数字の読み方

「世界一速い人はどれくらい速いのか」。タイピングを練習していると気になるところです。この記事では、記録として残っている数字を出典つきで並べます。

ただし先に、数字を比べる前に知っておくべきことがあります。


英語の WPM と日本の WPM は、測っているものが違う

英語圏のタイピングは WPM(Words Per Minute)=1分あたりの語数で測ります。慣習として「5打鍵=1語」に換算した値を使います。

一方、カケルを含む日本のタイピングは打鍵数そのものを数えます。

つまり英語式の「200 WPM」は、打鍵数に直すと1分あたり約1,000打鍵です。以下に出てくる数字はすべて英語式なので、日本式の数字とそのまま比べないでください。


バーバラ・ブラックバーン(Barbara Blackburn)

「世界最速のタイピスト」として最もよく名前が挙がる人です。

ギネスブックに掲載されたのは次の内容でした。

記録内容
持続速度145 wpm を55分間
最高速度170 wpm
掲載された版1976年版〜1986年版

その後、本人がより速い数値を出したという報道が続きます。

時期数値報じた媒体
1984年10月194 wpmAssociated Press
1985年1月196 wpmLos Angeles Times
1985年5月212 wpmThe Seattle Times

よく引用される 212 wpm は、この1985年5月の報道にある「短時間出した速度」です。ギネスに認定された数値ではありません。

配列は QWERTY ではなく Dvorak 配列を使っていました。

なお電動タイプライターやコンピューター式キーボードの記録は、正確に比較できないという理由で、1987年版以降のギネスブックから外されています現在「ギネス公認の世界最速」を名乗れる記録は存在しません。

(出典:Barbara Blackburn (typist) — Wikipedia同項が引用する The Seattle Times、Los Angeles Times、Associated Press の報道にもとづく)


現在のオンライン競技の記録

ギネスが手を引いたあと、記録の場はオンラインのタイピングサイトに移りました。

代表的なのが TypeRacer です。そこで残っている記録に次のものがあります。

  • 1時間続けて平均213 wpm
  • ランダムな10題で平均221 wpm

いずれも Joshua Hu という競技者の記録です。打鍵数に直すと、1時間にわたって毎分1,000打鍵を超え続けたことになります。

(出典:Typing — Wikipedia同項は当該記録について TypeRacer の対戦履歴と動画を出典にしています)


一般の人はどれくらい打つのか

トップの数字だけを見ても自分の位置はわかりません。研究で示されている一般的な水準は次のとおりです。

対象速度(英語式 wpm)
一般的なコンピューター利用者(書き写すとき)33 wpm
一般的なコンピューター利用者(自分で文章を考えるとき)19 wpm
専門的なタイピスト50〜80 wpm
高い入力速度が求められる職務80〜95 wpm

注目したいのは、書き写すときと自分で考えるときで速度がほぼ半分になることです。実務では「打つ速さ」より「考えながら打つ速さ」が効きます。

(出典:Typing — WikipediaKarat ら(1999)の研究を引用)


日本語で測るなら、検定の基準が物差しになる

日本語入力には英語式 WPM のような共通の記録がありません。代わりに、検定が合格基準を公表しています。

日本情報処理検定協会の文章入力スピード認定試験は10分間で測り、最上位の特段が2,000文字以上です。1級は1,000文字以上、2級は600文字以上です。

(出典:文章入力スピード認定試験|日本情報処理検定協会

級ごとの一覧と、WPM との関係はタイピング速度の目安にまとめています。


記録の数字から読み取れること

並べた数字に共通しているのは、速さが正確さの上に乗っていることです。

ブラックバーンの記録で価値があるのは170 wpm という瞬間の速さではなく、145 wpm を55分間続けたほうです。TypeRacer の記録も、1時間平均という持続の記録が中心になっています。

打ちまちがえて打ち直すたびに、その時間はまるごと失われます。短時間の最高速度より、崩れない速度を目標にしてください。

伸ばし方はタイピングを速くする完全ガイドにまとめています。


まとめ

  • ギネスに載ったのは145 wpm を55分間最高170 wpm。1987年版以降、この種の記録は掲載されていない
  • よく引用される 212 wpm は1985年5月の報道にある本人の記録で、ギネス認定値ではない
  • 現在の記録の場はオンライン。TypeRacer には1時間平均213 wpmの記録がある
  • 一般の利用者は書き写しで33 wpm、自分で考えながらだと19 wpm
  • 日本語で測るなら検定の基準が物差しになる。10分2,000文字で最上位
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